ダニエル書10章

 今日は、ダニエル書の10章の話をする。とはいえ、中心は天と地について、N.T.Wrightの提案を参考にして、ダニエル書の文脈の中でどう考えるか。午前中は準備の時間がたらず、かつお腹が空いていたので、あまりうまくまとまらなかった。そんな訳で、珍しいけど、午後に少し手を加える。それで話したら、夜はもうすこしうまくまとまったようだ。一部を抜粋すると・・

 ダニエルの見た幻と世界の歴史の現実との関わりを考えるためには、まず、「天と地」について理解しておかねばなりません。「神は天におられ、あなたは地にいる」(伝道者5:2)とあり、「天にまします我らの父よ」と主の祈りにおいて祈っていることからわかるように、神のおられる場所は天です。しかし、「天」は地上の上の空のことを指してはいません。もしそうだとしてたら、ロケットで宇宙に飛び出して見たら、そこに神がおられるはずです。しかし、宇宙に神はおられません。聖書は「天」を「神のおられる場所」と理解しています。その反対は「地」、わたしたちがいる場所です。地球の上空は聖書の理解によるとあくまでも「地」の一部です。むしろ「地」とは全く別の場所、「天」に神はおられます。
 ダニエルは、神のおられる「天」において起こっていることを幻を通して垣間見ています。ですから、「天」には四頭の大きな獣(7章)や複数の角をもった雄羊と雄やぎがいます(8章)。そこには「人のように見える者」(8:15)または「ガブリエル」(9:21)がいます。「主の使い」と呼ばれている存在です。「ペルシアの君」や「ギリシアの君」と呼ばれる者もいます(10章)。わたしたちがいる地上とは異なった存在によって「天」は構成されています。
 しかし、神のおられる天とわたしたちがいる地とは、無関係ではありません。ダニエルの幻に描かれている天の現実は、地での出来事と深い関わりがあります。たとえば、雄羊がメディアとペルシア、雄ひつじがギリシアを指し、帝国とその王たちの歴史を描いていたことからも、天と地の密接な結び付きがわわかります。もちろん、天におけるできごとが地におけるできごとにどのような影響を与えているかは、単純にまとめることはできません。人間の理解を越える形で、「天」と「地」は結び付き、世界(「地」)の歴史は進んでいくのです。
 聖書における「天」と「地」の結び付きを心に留める時、10章で描かれているダニエルの見た幻、聞いた言葉の意味が理解できるます。ダニエルの時代、イスラエルはペルシアの支配下におかれていました。しかし、天において力があるのはイスラエルの神とその使いであって、ペルシアの国の君ではありません。つまり、地においてイスラエルは力を持っていないように思えますが、天においての権威はイスラエルの神にあり、地での出来事もこの神のご計画通り進んでいきます。また、将来、地ではギリシアユダヤを支配するでしょう。しかし、天においてのギリシアの君との戦いは続きますが、最終的な勝利を神は取られます(10:20)。このようにして、地の出来事は天の出来事の現れですが、本当に心に留めるべきことは天での出来事なのです。
 天と地との不思議な結び付きをダニエル書は描いています。そして、天における幻を通して、神がどのようにして地での出来事に介入しておられるのかが知らされています。地での帝国の興亡は、人が自立して、その思いのままに進めている事ではなく、「天」すなわち神の深い関わりの中で起こっています。そして、天において権威をもっておられる神が、地に起こる出来事においても最終的な勝利を獲得されます。

 信徒の人には、「地上のことも大切だが、天を見上げて、天における神の主権を覚えて生きる事が大切だ」という表現にすると主要なポイントは良く伝わるようだ。ただ、他にもいろいろな要素はあるのだがねえ。