街場の現代思想
- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/04/10
- メディア: 文庫
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人間形成を考えるにあたって、彼の思索は実に役に立つ。これまで、「たぶん、これは役に立つと思うけど、どうしてなんだろうか」と考えていたことに対する、明確な思想的背景を提示してくれるからだ。今日、呼んでいて、なるほどと、膝を叩いたのは、結婚に関する件。
結婚は快楽を保証しない。むしろ、結婚が約束するのはエンドレスの「不快」である。だが、それをクリアーした人間に「快楽」をではなく、ある「達成」を約束している。それは再生産ではない。「不快な隣人」、すなわち「他者」と共生する能力である。おそらくはそれこそが根源的な意味において人間を人間たらしめている条件なのである。(153頁)
他者と共生する能力、自分では一向に理解できない隣人を、それでも受けとめ、受容する能力こそ、結婚がわれらに与えてくれるものである。結婚が、われらを人間とする。
学校の寮生活などについて、いろいろ考えていたが、これを読んで、なるほど、と腑に落ちた。狭いところに二人一部屋の寮生活は明らかに不快である。そして、相手が不快な人ならなおさらである。しかし、そのようなエンドレスな不快を経験することによって、他者と共生する人を育てることができる。不快な人を、理解できない人を、それでも受けとめられないならば、人格形成は進められない。