空と縁起と無自性

 縁起と無自性の関係について、これまでの議論を中村は次のようにまとめている。
「『中論』によると、一切のものの関係は決して各自独存孤立ではなくて相依相資であるというのである(引用者注:つまり相互依存)。一切の事物は相互に限定し合う無限の相関関係をなして成立しているのであり(引用者注:つまり縁起)、何ら他のものとは無関係な独立固体の実体を認めることはできない(引用者注:つまり無自性)という主張の下に、相依性の意味の縁起を説いたのである。」(中村203)。
 それでは、空と縁起と無自性とは論理的にはどのようなつながりがあるのだろうか。龍樹の著作を調べる時、縁起のゆえに無自性が主張されており、縁起のゆえに空が主張されている。更に、無自性のゆえに空が主張されている。このことから考えて、縁起は常に由来であり、空は常に結果であり、無自性は由来でも結果でもありえる。相互依存の関係にあらゆる存在があるから(縁起)、不変・不滅の存在はなにひとつなく(無自性)、その結果、すべてのものが空である。したがって、「空」という表現は縁起ならびに無自性を表す一種の「象徴」と捉えることも可能かもしれない。