友だち地獄

友だち地獄 (ちくま新書)

友だち地獄 (ちくま新書)

 現代の子ども、若者の社会的現実を述べた本。うちの五年生の息子が読んで、「学校ではその通りだ」と言っていたので、結構、鋭いところをついていると思う。
 ポイントとしては「優しい関係」という、まわりの人との衝突を徹底的に避ける生き方の中で、生きづらさを感じているということ。そして、「優しい関係」はつねにまわりに敏感でなければならないために、どうしても親密な人間関係は狭いものとなる。このような小さな範囲の対人関係に精力を使い尽くしているために、どうしてもそれより広がった人間関係まで考える余力はないのだそうだ。
 自分のリアリティの中心は、自分が何かで獲得していくものではなく、生来のものと考える。彼らが求めているのは、「善なること」という社会的な基準ではなく、「いい感じ」という自分そのものが基準となる。人と人との様々な関係の中から純粋な関係が生み出されることが期待されるのではなく、純粋な関係への期待がまずあって、それに合う人だけが選ばれていく。
 ある意味で、ナルシシズム的な方向性があるのだろう。「自分らしさという檻」から脱出することによって、生きづらい世界で生きていくことが必要であろう。著者は、そのための方策として、意外性に満ちた体験や異質の人々との出会いかもしれない、と述べていた。なるほど。