Simply Christian

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 Tom Wrightによるキリスト教入門。とはいえ、クリスチャンでない人に読ませて、はたしてクリスチャンになるだろうか、と疑問を感じる。むしろ、クリスチャンが、みずからの信じているものがなんであるのか、整理するための本といえる。
 justice, spirituality, relationship, beautyという人々のうちの飢え渇きの叙述からはじめて、Wrightの理解しているキリスト教教理(というよりも「キリスト者の物語」)の叙述が中心。神、イスラエル、イエス聖霊という、三位一体的な形で、キリスト者の物語が叙述される。最後には、キリスト者の物語に則って、キリスト者の生き方とはなにか、という観点から、礼拝、祈り、聖書、教会、終末的生についてかかれている。
 彼の著書の特徴的な所は、天と地の理解を三つにわけ、汎神論、理神論、キリスト教的理解の三つにわけていること。神と人間の領域は全く重なっているのか(汎神論)、全く重なっていないのか(理神論)、神秘的に重なり、噛みあっているのか(キリスト教的理解)。ウエスレーが言う「めぐみの手段」(礼拝、祈祷、聖書などなど)は、天と地が神秘的に重なりあっている場であるとWrightは理解している。
 いろいろな意味で、Wrightの理解しているキリスト教がよくわかる本。ちなみに、本の題名は、C.S.Lewisのmere christianity(キリスト教の精髄)から。彼の復活の本がsurprised by joyに引っかけて、surprised by hopeとなっているのも同じ。もう一冊、出るようだが、それは何に引っかけ、何のトピックを書くのだろうか。