不機嫌な職場

不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)

不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)

 朝日新聞の書評(お世話になってるなあ)にあった本。書評を一読して、これは読まねば、と思い、購入。最近、組織論に興味があるので、読んでおきたかった。
 問題点は、「お互いに関わらない、協力しあえない組織」。人間関係が希薄化した組織を不機嫌な職場と読んでいる訳だ。正直言って、そのような組織について、いくつか思い当たる所がある。
 不機嫌な職場が生まれる原因にはいくつかあるようだ。まず、仕事の範囲があいまいであって、なんとなくうまくいっていたのが、成果主義と仕事の効果化の結果、「タコ壺化」してしまった。かつて組織にあった遊びがなくなり、人々の間に壁ができてしまった。次に、インフォーマルネットワークが失われてしまった結果、情報の共有ができなくなった。最後に、長期雇用ということで協力行動が担保されていたのだが、自分のためにならない業務に手を出さなくなってしまった。
 どうすればいいのか。「自分が協力する意図と自分に協力してもらうニーズをまわりのみんなにわかってもらう方策」を組織として実行すること。具体的には、目標や価値観の共通化、発言に壁をつくらない、特定の人にしかわからない状況を作らない、面白いインフォーマル活動をする、感謝、認知という効力感という感情を与えるため、「ありがとう」ということばを用いること。
 本書を読みながら考えたのは、人は「感情の動物」である、ということ。最後の部分で、損得勘定から根源的感情と言っているところからもよくわかる。そう、「いい気持ち」にならないと、その組織は不機嫌な職場になってしまうのだろう。自分の感じていることを共有すること、そしてなによりもまず困った人を助けること。それが必要なんだ。
 教会とか教団とかも、結局、人間の組織。神学的な議論も大切だし、そこから考えられるいろいろなこともある。でも、感情の動物である人間が集まっているのだから、「いい気持ち」になる必要がある。
 それにしても、主要参考文献を見てみたら、社会心理学の本、特に山岸俊男の本が載っていた。こんな本(社会的ジレンマ―「環境破壊」から「いじめ」まで (PHP新書))やこんな本(信頼の構造: こころと社会の進化ゲーム)が載っていた。これから数冊、社会心理学関係の本を読んでいこうとは思っている。ただし、ここで参照されている本とは限らないのだが。