マリア

 午前中、マリア(The Nativity Story)を見に行く。
 結構、時代考証をしっかり考えて、作られている。とはいえ、マタイとルカの記述を混ぜ合わしているので、すこしご都合主語的もある。
 良かった所は、ナザレの村におけるマリヤの位置づけをしっかりと描いていた点。妊娠ということによって、村における誉れと恥の問題が、しっかりと描かれていたところ。どうしても、個人主義的な描き方が見られるが、村にいることができなくなる状況、そして、それゆえに、あえてベツレヘムへの旅をする点など、良く描かれていたと思う。また、エリザベトの所へマリアが行く点とマリアの妊娠がわかる点をうまく重ね合わせ、さらにマリアがひとりでエリザベトの所まで行くのではなく、他の家族と共に行く点など、結構、現実的な解釈を加えている。エリザベトの所にいる間に妊娠がわかり、お腹が大きくなって変えって来る点など、ベツレヘムから離れていくきっかけの描き方は、うまい。あと、家畜小屋が洞窟なのはいいですね。
 問題点。まず、ガリラヤ湖はあんな湖ではない。そんなすぐ近くに対岸は見えない。まあ、現場では取ったのではないので、仕方ないだろうが。それに、旅において、マリヤとヨセフが荒野を二人だけで旅するところがあるが、当時の街道沿いを進んだのだから、そんなことはほとんどないはず。ベツレヘムに着いた時のベツレヘムの様子。赤ん坊が生まれそうな夫婦が到着したのに、あんなに冷たい仕打ちは、絶対にあり得ない。あんなことをしていたら、ソドムかゴモラのように火が下るだろう。彼らのhospitalityをもっと描くべき。さらに、家畜小屋が洞窟なのはいいが、前に家もなく、開放された場所。まあ、見つけやすいだろうが、あんな所に家畜をおいておいたら、泥棒にすぐ盗まれてしまう。前に家がある方がいいだろうなあ。羊飼いに現れた主の使いは、全然輝いていないし、天の軍勢を賛美していない。きわめつけは、羊飼いと占星術師たちを誕生の日に聖家族をおとずれさせたために、ヨセフたちはすぐにエジプトに逃げなければならなくなり、その結果、エルサレムの神殿での出来事が、全く割愛された点。
 全体として、良くできた映画だと思うが、一般大衆の期待に合わせてしまったために、どうしても曲げてしまった点があるのが残念。パッションよりは見やすいけど、子どもややっぱり難しかったようだ。怖い、と言っていた(暗い所が多いからかも)。