学校教育(その1)

 学校教育についての部分は、現行法はたいへん短い。

(学校教育)
第6条 法律に定める学校は、公の性質をもつものであつて、国又は地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
2 法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であって、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。

 ところが、自民党案ではたいへん長くなっている。

(学校教育)
第6条 法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
 2 前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。
(大学)
第7条 大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
 2 大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。
(私立学校)
第8条 私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。
(教員)
第9条 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
 2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。

 自民党案の第6条第1項は、ほとんど現行法の第6条第1項と同じである。日本語としては、現行法は、国および地方公共団体に学校設立における優先権があるように読める一方で、自民党案は国、地方公共団体、その他の法人が同じ位置から学校の設立が可能と読める。これは改善。
 あとは自民党案の検討を行ってみよう。
 まず、第6条第2項。学校教育の目的は、「教育の目標の達成」。学校教育はあくまで「教育を受ける者の心身の発達に応じて」行われるべきである。つまり、現在の学校制度のように、「学年を定めて」教育を行う。更に、「体系的な教育が組織的に行う」。あたり前のように思われるが、これは「軍隊の教育」を思い起こさせる表現ではないだろうか。もちろん、体系的な教育でなければならないだろうし、組織だって行われると効率は上がる。現在の学校教育は確かにそうだ。けれども、それで失ってしまっているなにかがあるような気がするのだが。
 更に、学校における規律の重視が謳われている。これも「軍隊教育」の香りがする。そして、おまけのように、自発的に学習できるように意欲を高めること。しかし、考えて欲しい、体系的な教育が組織的に行われ、かつ規律が重視されている学校で、自発的に学習することができるのだろうか。自発性とはまさに「体系」や「組織」や「規律」の枠を破った所に生まれてくるのではないだろうか。そのような枠の中での自発性など、「学習に対する愛」による自発性ではなく、「敗北者となることを恐れる」ことから生まれる自発性のような気がする。