義務教育

まず、現行法から。

(義務教育)
第4条 国民は、その保護する子女に、9年の普通教育を受けさせる義務を負う。
2 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。

続いて、自民党案は、

(義務教育)
第5条 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
 2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
 3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
 4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。

である。
 自民党案は第二項ならびに第三項が追加されている。また、義務教育の年限を容易に変化させやすいようにしている。
 自民党案の第二項において気になる点は、その後半、「国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うこと」である。もちろん、「社会の形成者」という発想は理解できるが、あえて「国家の形成者」という表現を加えている点が、自民党案の持つ「国家主義的」な側面と考えることができる。もちろん、個人の自立とのペアではあるが、あえて加えられている点が気になる。
 更に、第三項において、国や地方公共団体が「義務教育の・・水準を確保するため、・・その実施に責任を負う」点も気になる。つまり、「水準を確保」するという名目があるならば、国家は義務教育に介入することが可能となる。「国家主義的」な教育基本法である、とは言わない。しかし、個人主義の弊害を取り除く、という自民党の意図は、どうしても「国家主義的」な側面が強調されてしまう。国家か、個人か、という二元論的な発想ではないか。むしろ、個人が自立し、自立した個人が社会と共に生きる生き方が勧められることが重要ではないだろうか。そして、現行法の精神は自立した個人の養育を通して、共に生きる社会の形成を目指している。変える必要があるのだろうか。