ダ・ヴィンチ・コード??

 今日からダ・ヴィンチ・コードの映画が公開されたので、それに関するテレビをやっているので見ている。取りあえず、800円で本も買ったので、もうじき読もうとは思っているが。

The Da Vinci Code (Robert Langdon)

The Da Vinci Code (Robert Langdon)

 さて、どのような内容なのか。
 暗号がいくつかある。まず、暗号1は「最後の晩餐の女性」。まあ、見えなくはない。
 暗号2には最後の晩餐に秘められた「エム」。まあ、読めなくはない。女の位置を左右逆にするとイエスに寄り添っている、ということ。まあ、それも可能でしょう。
 暗号3は「マグダラのマリヤ」。マリヤは他にもたくさんいるのに、なぜ彼女を選ばなければならないのか。まあ、元娼婦であった、という俗説でスキャンダラスなのと、次のグノーチスの文書とも一致するからでしょう。
 暗号4は「ナグ・ハマディ文書」。この文書、グノーチスである。そして、最後には「すべての女は男になる」なんてめちゃくちゃなことを言っている。果たして、そこで証言されているイエスとマグダラのマリヤの関係は信頼するに足るのか。それと共に、マグダラのマリヤとイエスの関係を否定するために、教会が「マグダラのマリヤ娼婦説」を流布したとも言っている。思い込みはすごい。
 暗号5は「聖書は作られた」(つまり、コンスタンティ大帝によって、イエスが神に祭り上げられ、キリストの人性を否定するものが否定された)。イエスの神性を否定するような書物が聖書からコンスタンティによって消去された、という考えは、正典編纂の歴史から考えて全く嘘。すでに定まっていたのを決めただけ。つまり、かなり以前からトマスの福音書などは正典には含まれていなかった。更に、教理史の知識があれば、コンスタンティ大帝が開いたニケア会議における議論は単に「イエスが神か人か」なんている単純なものではない。いわゆるホモウシオスとホモイウシオスの問題。イエスが「神」であるのは事実だが、父とのかかわりにおいてどのような神であるのか、が問題である。「歴史から消された女性」。マグダラのマリヤは娼婦ではない。しかし、「香油を足に塗る行為」が結婚の行為であるという考えはおかしい。これはむしろ「奴隷」の行為である。また、福音書を読むと、三種類の女性がイエスの足に香油を塗っている。すると、三人の女性と結婚しているのか。更に、「教会」がこの結婚の事実を隠したのか。学問的にいい加減なことをあたかも真実であるかのように語っているテレビは問題。さすが、「楽しければそれでいい」フジテレビ。中身なし。
 これらを組み合わせて考えるのは面白い。しかし、そこに「教会への批判」と「俗説との結合」がダン・ブラウンによって組み込まれている。学問的に信憑性の低い説を、あたかも「事実」のように語っている点が大きな問題。まあ、ダ・ビンチがそのように信じていた、と考えるのは勝手だが(また、可能だが)、ダ・ビンチの信じているのが、歴史的事実という議論は飛躍。もちろん、ダ・ビンチの時代の教会の行動に問題が多くあったのは否定はしないが(ちなみに宗教改革前夜)。
 暗号6は「モナリザの仕組まれた微笑み」。背景が宗教画とのかかわりがあるとのこと。特定のモデルが存在しない可能性がある。そして、これはマグダラのマリヤだ、という考えでしょう。そして、彼女が妊娠していた。まあ、これもダ・ビンチがそう思い込んでいてもいいでしょう。
 暗号7は「謎の秘密結社」。シオン修道会があるそうです。そして、その総長にいろいろ有名人がいて、ダ・ビンチもそのひとりだそうです。ただし、シオン修道会についてはwikipedia参照。この修道会は結構はったり。そして、最後の晩餐の絵には聖杯が書かれていない。
 暗号8は「消えた聖杯」。テンプル騎士団が聖杯を隠したそうだ。スコットランドの教会の地下に礼拝堂があるそうだ。ただ、ダ・ビンチが聖杯を書かなかったのはなぜか。それはマグダラのマリヤがイエスの子を宿しているから(ここではVサインが暗号とのこと)。聖杯はイエスの子孫だそうです。そして、その子孫が南フランスにいるそうで(そういえば、日本にもイエスの子孫がいたと思うが)。少女サラの像がイエスの子孫(追放された王族)。
 ちゃんと批判するために、本を読まなければならないけれど、これだけいろいろな俗説を重ねた、まさに「B級娯楽スリラー」と「ダ・ビンチ・コード」をみなすべきだろう。けれども、キリスト教についてちゃんとした知識のないこの国では、しっかりと話をしなければならないでしょう。それにしても、登場した学者、自分がどのような形で使われているのか、わかっているのだろうか。多分、「とんでもな意見が正しい」ことをサポートするために用いられているのをわかっている人は少ないだろう。Karen Kingなんて、どうする気?