ルツ記二章

☆ アウトライン
 
 I. 序論:ボアズの紹介(2:1)
  A. エリメレクの親戚、裕福な男、ボアズ
 II. ボアズの畑での落ち穂拾い(2:2-22)
  A. ルツとナオミ(2)
   1. モアブの女ルツの提案(2a)
    a. 畑に行かせて下さい
    b. 目的:親切な人のあとについて落ち穂拾いをする(2b)
   2. ナオミの承認(2b)
  B. ボアズの畑にて(3-17)
   1. ルツの行動(3)
    a. 行った、来た、畑で落ち穂を拾った
    b. 彼女がたまたま来たのはボアズの畑であった(主語の変更)
   2. ボアズと刈る者たち(4-7)
    a. ボアズがベツレヘムより登場(4a)
    b. ボアズの刈る者たちへの挨拶(4b):主がともにおられるように
    c. 刈る者たちのボアズへの挨拶(4c):主があなたを祝福されるように
    d. ボアズの監督者への質問(5):この女はだれの娘か
    e. 監督者からの答え(6-7)
     (1) 彼女はモアブの女、ナオミとともにモアブの野から帰ってきた
     (2) 彼女のことば:落ち穂拾いをさせて下さい、集めさせて下さい
     (3) 彼女の行動:来た、朝から今まで立っている、殆ど休んでいない
   3. ボアズとルツ(8-14)
    a. ボアズのことば(8-9)
     (1) 他の畑に行くな、ここから決して去るな、私の女たちについていけ
     (2) 若い者たちには邪魔をしないように行っている
     (3) のどが渇いたら、若者たちの汲んだ水を飲め
    b. ルツの返答(10)
     (1) 顔をたれ、地面にひれ伏す
     (2) どうして、私のような外国人を?
    c. ボアズの返答(11-12)
     (1) 夫の死の後、あなたがあなたの夫にしてことをすべて伝えられた
     (2) 主が報われるように
    d. ルツの返答(13)
     (1) あなたは私に親切にされる
     (2) あなたは私を慰め、懇ろに語られたから   
    e. 食事の際(14)
     (1) ボアズ:ここに来てパンを食べよ
     (2) ルツ:座り、食べ、満足し、残した
   4. ボアズと若者たち(15-16)   
    a. ルツ:落ち穂を拾うために立ちあがる
    b. 若者たちに命じるボアズ
     (1) 束の間で穂を拾わせよ、束の間からわざと抜き落とせ
   5. ルツの行動(17)
    a. 夕方まで穂を拾う、穂を打つ、一エパの大麦となる
  C. ルツとナオミ(18-22)
   1. ルツ(18)
    a. 携え、町に入り、しゅうとに示し、食べ残りを出してあたえた
   2. ナオミ(19a)  
    a. どこで穂を拾ったのか
    b. あなたを認めた人は祝福されるべき
   3. ルツ(19b)
    a. だれと働いたかを告げた
    b. その人の名、ボアズ、を告げた
   4. ナオミ(20)
    a. 生きている者も死んだ者もそのいつくしみを捨てられない主は祝福されるべき
    b. 彼は近親者、われらをあがなう者たちの一人
   5. ルツ(21)
    a. 刈り入れが終わるまで私に属する人々についていなさい、と彼は言った
   6. ナオミ(22)
    a. それはよいことだ
    b. 他の畑でいじめられなくてすむ
 III. 結論:落ち穂拾いの継続(2:23)
  A. ルツはボアズのところで働く女たちのそばについて、大麦と小麦の収穫の終わりまで穂を拾った、姑とともに彼女は住んだ
 
☆ 二章の理解
 
  二章のデザインの中で特に注目すべきは、クライマックスである。
 二章の冒頭で、ナレーターはまだ登場していないボアズをいきなり紹介している(2:1)。ナオミの夫の親戚(つまり、エリメレクの一族)であること、そして裕福であることが指摘されている。読者は、ボアズがこれからルツとナオミの物語に何らかの形で関わることが予感している。
 続いて、落ち穂拾いに出かけたルツが、たまたまボアズに属する畑に来たことが記されている(2:3)。2:3で記されている四つの動詞のうち、最初の二つはルツが主体的な行動をとっているが、ボアズの畑に来たことだけは、ルツの意志的な行動ではなく、「たまたま」「偶然に」訪れたことが強調されている。落ち穂拾いさえも自分からすすんで出かけてきたルツは、ボアズの畑に来ることだけは、自主的ではない。
 しかし、この「偶然」の出来事を通して、ボアズがルツを畑で認め、その評判を聞き(2:4-7)、さらには親切に対応する(2:8-14)。そして、ボアズの行動を受けて、ルツはナオミにその出来事を報告する(2:19)。ルツはこの時点では、2:1の情報、つまりボアズがナオミの夫の親戚の一人であることは知らない。そして、全体のクライマックスである、ナオミのことば、「生きている者をも、死んだ者をも顧みて、いつくしみを賜る主が、どうぞその人を祝福されるように」(2:20)へと導かれる。
 このクライマックスへの展開は、いくつかのことを示唆する。
 まず、ナオミが主の働きに気がつくことこそが本章の中心主題という点である。2:20のナオミのことばが最高点を構成している点から、このことは明らかであろう。第一章で「全能者がひどくわたしを苦しめた」(1:20)と嘆いていたナオミが、「生きている者をも、死んだ者をも顧みて、いつくしみを賜る主がその人を祝されるように」と主の顧みといつくしみに焦点を当てるように変わっている点は特筆すべきである。ナオミは、ルツとボアズの出会いを通して、これまで気がついていなかった主のわざに気がついている。ナオミはこれをきっかけに大きく変化していく。
 次に、2:3において、ルツがボアズに属する畑に入っていったことの偶然性が強調されている。ルツは、意図的にボアズの畑と知って、そこで落ち穂拾いをしたわけではない。この偶然性は、主の働きの裏返しであり、ナオミが2:20で気がついたことにはこの点も含まれている。つまり、主がルツとボアズの出会いを演出した、と考えることが適切である。そうすると、先のポイントと合わせると、主がナオミにご自身の顧みといつくしみを気がつかせるために、ここで働いたことに気がつく。
 最後に、主の働きも、ルツの積極的な提案なしには、進まない。ルツが「落ち穂拾いに行かせて下さい」(2:2)と提案したからこそ、この出来事が起こったのである。したがって、第一章で示唆されていたように、主がナオミにあたえられたすばらしい賜物はルツである。ルツの積極的な働きを通して、主はわざをなされたのである。ただし、ルツは積極的である反面、ボアズのことばには徹底的に従順である(2:14, 21-23)。また、ボアズが自分たちとどのような関係にあるのかをルツは知らないでボアズと接してきている。打算のない、純粋なルツの行動をここにみる。また、ルツはナオミに対して積極的に提案はしているものの、最終的にはナオミの許可のことばにしたがって、落ち穂拾いに行っている(2:2)。積極性と従順の二つをもち、打算のない純粋な一人の女性が大きな働きをしていることが第二章におけるルツの行動から分かる。