ものつくり敗戦

ものつくり敗戦―「匠の呪縛」が日本を衰退させる (日経プレミアシリーズ)

ものつくり敗戦―「匠の呪縛」が日本を衰退させる (日経プレミアシリーズ)

 匠の技、ものつくりのわざを日本は誇っているようだが、それに対して明確なNOを突きつける本。
 著者は、科学技術の歴史を、道具から機械への「産業革命」、機械からシステムへの「第三の科学革命」で捉えている。ところが、労働集約型技術に特徴付けられる日本の産業は、機械からシステムへの移行が進みつつある中で、かたくなにシステムから機械(つまり匠)へと逆行していると著者は指摘する。システム化は普遍性を強調するが、日本の産業は一般化を行おうとしない。個人の努力不足に原因を見つけ出そうとする。そして、理論と数学を軽視するはこもの主義に陥っている。普遍性と理論と数学を重んじないからこそ、コンピューター産業における「ソフトウエア」の戦いに日本の産業は負けているのだ、と著者は主張している。そして、理論、システム、ソフトウエアが日本の技術の三大苦手科目と断言する。理論よりは経験やカンを重んじる。システムよりは各要素の技術を求める。ソフトウエアよりはハードウエアに目が向く。
 日本の技術についての本である。しかし、現代の教会が直面している問題も、同じようなものかな、と思える。かつては労働集約的な発想で教会を運営し、はこものを造り、長年の牧会経験を重んじてきた。しかし、それではどうにもならない時代になっているように思える。別に西洋化する必要はないだろうが、礼拝に来ている人が高齢化し、減っている現実を覚える時に、「労働集約的」な点から脱却すべきではないか、と思える。
 普遍性という点を思う時に、「カテキズム」の重要性を感じる。普遍的な信仰の手ほどきをするために、カテキズムは避けて通れない。