国家論
- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2007/12/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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マルクス、宇野弘造、ゲルナー、そしてバルトを読みながら、国家と社会を語っている。おもしろいのは、彼が最後にはバルトと聖書、つまりキリスト教神学のもつ国家という暴力装置への批判をもって、議論を閉じているところである。
最近、新約聖書学の中では、キリスト教信仰が実に帝国に対して批判的であるという観点が強調されてきている。イエスもパウロも、ローマ皇帝の権力支配(暴力支配)に大いに批判的であったわけだ。当然、黙示録も批判的である(ローマは竜なんだから)。そういう点から見ると、国家という暴力装置への批判にキリスト教神学をもってくるのは、適切だと思う。
旧約聖書は、批判的でないのか。そうではないと思う。申命記に現れている「立憲主義」の思想は、強大になりかねない王制への批判となっている。そして、多くの預言者たちが、暴力を産み出す国家とその中心にいる王侯たちへの批判で満ちている。
福音派が社会的問題に対して弱いのは、そのあたりをちゃんと読み取っていないからだろう。というか、「福音」理解の薄さが原因なのだろう。