イスラーム文化

イスラーム文化−その根柢にあるもの (岩波文庫)

イスラーム文化−その根柢にあるもの (岩波文庫)

(ちなみに、なぜ、「イスラーム文化」と「その根柢にあるもの」の間に、「?」があるのかは知りません。)
 イスラーム文化(というか、その宗教的背景)をわかりやすく、読みやすく書いた名著といえるだろう。ここまで書ける、ということは、それほど深く理解している訳だ。わたしもこうなりたいものだ。
 コーランの前期(メッカ期)と後期(メディナ期)、前期の終末論的、後期の共同体的姿、スンニー派における聖典解釈に基づく生活のあらゆる面での規範、イジュティハードの門の閉鎖(コーランハディース自由解釈の終わり)、シーア派の内面主義(そして、最高のシーア派学識経験者による統治の必要性・・なぜイランが「ホメイニ師」によって統治されたり、前大統領が「〜師」であった理由が分かった)、イスラーム神秘主義スーフィー。いい勉強になりました。
 イスラームほどではないだろうが、キリスト教も根本的には聖典解釈主義の宗教である。そして、その自由解釈の門は閉ざされてはいない。そんな現実を思う。そして、シーア派によるコーランの内的意味の探索はオリゲネスなどのアレゴリーによる解釈に通じる点はあるし、スーフィーキリスト教神秘主義と並行している。また、「汝の汝性」の向こう側にある神的我など、神秘主義、経験主義のにおいがプンプンしており、宗教経験の並行性を覚える。
 ひょっとすると、自分の信仰をより適切に理解するために、他の宗教の姿をしっかりと学ぶことが必要なのかもしれない。