容疑者χの献身

容疑者Xの献身 (文春文庫)

容疑者Xの献身 (文春文庫)

 前から読みたかったので、文庫本を見つけ、購入。今日の夕方から読み始め、読了。これくらいの推理小説なら、数時間で読んでしまう。ただし、その時間は、人の話が聞けない。
 「本格か、そうでないか」という議論がわき起こっただけあって、なるほど、と思う。ある意味で、叙述のトリックといえなくもない。最後まで、だまされてしまった。
 それとともに、最後が悲しい。そして、「どのような事情があれ、殺人は間違っている」という湯川学の哲学が現れているのではないだろうか。人は、罪悪感を隠したままでは、生きてはいけない。そして、どのような献身さえも、殺人を犯した罪悪感から、その人を解放することはできない。どこかでひずみが出てくる。
 それから、タイトルの意味は、いろいろと考えられる。しかし、容疑者「エックス」ではなく、容疑者「キー」ではないか、と思うのだが。だから、今日のタイトルは「容疑者『キー』の献身」である。