ハリー・ポッターと死の秘宝

 読了。
 翻訳者は、人生で一番大切なものは愛と友情と勇気だ、とのたまわっている。これじゃあ、少年ジャンプだ、と思うのは私だけだろうか。しかし、どれだけハリー・ポッターの1〜6巻が魔法中心の、反キリスト教的だと言おうが、結局、ハリーが勝利するのは、他者のために自らすすんで命を投げ出すことによってである。この点において、キリスト教的な解決としかいいようがない。いろいろな人が言ってはいるが、第七巻ほど「キリスト教」的なものはない。
 最後に出てくる駅がKing's Crossであり、ハリーが自分から進んで戦うことを選び取る点、力の誘惑に負けるものは、それゆえに身を滅ぼす点、墓石に書かれている聖書のことばが二つある点、などなど、やっぱり、どこかに「キリスト」を絡めている。いや、西洋文学の流れの中に身をおく限り、キリスト教的メタナラティヴから自由になることは難しいのかもしれない。