The Living Word of God

The Living Word of God: Rethinking the Theology of the Bible

The Living Word of God: Rethinking the Theology of the Bible

 Ben Witherington IIIの本。寡作の彼の本を、まともに最初から最後まで読んだのは、これが初めてか。
 内容は、聖書論。霊感について、ジャンルについて、翻訳について、解釈について、ポストモダン聖書解釈について、いろいろと述べている。Gordon Feeの弟子であったので、保守的である。Joel Greenはpostmodernな解釈(theological hermeneutics)を提案していたが、Witheringtonはもっと保守的で、modernな解釈を提案している。これまで、保守的な聖書解釈で言われてきた「聖書は聖書が解釈する」「発展的啓示」などが、彼にとってのメインの解釈論と思われる。
 また、「真理」の理解に関しては、Richard HaysのThe Art of Reading the Scriptureなどのpostmodernのラインには批判的である。Haysなどは決してa-historical approachではないが、Witheringtonが求めているほどはhistoricalではない。Childsなどのintertextualなアプローチにも批判的。これも、やっぱり、彼が求めているほどhistoricalではないため。次の引用が、Witheringtonの聖書の啓示理解を表しているような気がする。

It rests on assumptions about God's inablity to speak clearly and adequately covey the truth to his creature (p. 190).

これは、William Stacy Johnsonに対する批判であるが、Witheringtonは「神は真理を明確に、かつ適切に聖書を通して語っている」と考えていることがわかる。つまり、歴史的な研究をしっかりと行い、そのテキストのジャンルが明確になる(彼のジャンルに関する主張は聞くべき。第四章は、ためになる。詳しくはわからないが、一時流行ったジャンル批評がWitheringtonのベースにあるのかもしれない)ならば、神の真理は一義的に明確であり、被造物もそれを適切に理解できる、と考えている。人間のおかれている限界を考える時に、聖書の時代と文化と、現代の距離を感じるために、そこまで言い切ることができないのが、わたしである。だからこそ、人間の限界を踏まえた上で取り組む聖書解釈がいいのではないかなあ、と思うのだが。このあたりが、聖書解釈おける聖霊論の必要性だと思う。
 それから、Peter Ennsの本が話題となっているようだが、彼の本に対しても批評の文章が載せられている。彼はEnnsのagnostic(不可知論)な傾向が気に入らないよう。ただ、旧約聖書では、新約聖書以上に、「あれか、これか」と決められない歴史的問題が多く、Ennsもそのあたりを意識して、あえて歴史的に不可知論に至っているような気がするのだが。それでも、「これが正しくて、あれが間違い」、「これも正しく、あれも正しい」と言わねばならないのだろうか。
 しかし、福音派の聖書論は難しい。どこかで、だれかが異議を唱える。