パラダイス鎖国
パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)
- 作者: 海部美知
- 出版社/メーカー: アスキー
- 発売日: 2008/03/10
- メディア: 新書
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「パラダイス鎖国」とは、国内が豊かになるために、結果的に海外への興味がなくなってしまっている現象のことだと思う(12)。日本は住みよくて不便を感じない、けれども何となく閉塞感がある。携帯電話は内弁慶ビジネス。そんな状況。教会でもそうかもしれない。海外宣教師になりたい、留学したい、という人の声があまり聞こえてこない。
まず、解析。
金融政策や各種の権利保護など、立場の違いにより賛否両論あるような点はなかなか先に進まないが、「鉄道が便利になる」「上下水道が整備される」「初等教育を普及させる」などといった、誰も批判しにくく、暗黙の合意が形成されやすいものについては、どんどん進む。(74-75)
つまり、義務教育はいいが、高等教育についてはどう発展させていけばいいのかわかっていない、ブロードバンドアクセスは普及するが、映像の著作権なんかは、徹底的に遅れている。
この状況で行くと、海外でのブランド力が落ちることを心配しているが、それとともに、私自身も懸念を感じるのが、「日本の社会の変化が遅く、外界の変化についていけなくなってしまっている」(86-87)の状況。これこそが閉塞感の原因だと思う。変化が遅い、問題についていけない。企業のことを言っているが、日本の文化にしっかりと根ざしている(浸っている?)教会、教団もそのような気がする。
次に対策。
果てなき生産性向上はかってに進んでいくだろうか、継続的にイノベーションを生み出していく試行錯誤戦略。ちょっとくらいの摩擦があろうが、それを育てていく戦略。創造的出会いを起こし、そこからイノベーションを生み出していく。
多様性。「利害や価値観が対立する人やグループもすべてひっくるめて、ニッポンという大きな仕組みの中に共存させ、そこでは常にこれらの人とグループの間のバランスが変化している」(132)。混とんも恐れず、プチ変人(ミニ・ジョブス、ミニ・ゲイツ)を育てる。
面白いと思う。結局、彼女が目指しているのは、多様性が共存し、それゆえに創造性が広がる共同体である。結局、創世記1章が提示している、「生きる意味を創造する共同体」の形成が一つの処方せんなのかも知れない。「世界にひとつだけの花」をみんなと一緒に歌っているだけでは、だめなのだ。